映画十撰 : 「犬神家の一族」(1976年/日本/146分)

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「犬神家の一族」(1976年/日本/146分)

[データ]
「犬神家の一族」
[監督] 市川崑
[原作] 横溝正史
[脚本] 長田紀生、日高真也、市川崑
[撮影] 長谷川清
[音楽] 大野雄二
[出演] 石坂浩二、島田陽子、あおい輝彦、高峰三枝子、草笛光子、三条美紀、川口晶、坂口良子、地井武男、川口恒、小林昭二、三谷昇、寺田稔、加藤武、大滝秀治、金田龍之介、三木のり平、岸田今日子、小沢栄太郎、三國連太郎
[評価] ★★★★☆
 
[あらすじ]
 昭和二十二年二月、信州・那須市。孤児から野々宮神官に拾われ、後に莫大な財を築いた犬神佐兵衛が病没する。その七ヵ月後、探偵・金田一耕助がこの地を訪問。犬神家に事件が起こることを心配した犬神家の顧問弁護士・若林が、調査を依頼したためだ。が、同じ日、金田一に会う直前、その若林弁護士が毒殺されてしまう。
 いまだ公開されない佐兵衛の遺言に関係があると悟った、犬神家のもうひとりの顧問弁護士・古館は、引き続き金田一に調査を依頼する。血縁者九人がそろわねば発表できないという佐兵衛の遺言。その中身が不可解な内容であることを知っていたのは、古館と若林だけだった。
 そんな中、血縁者の最後の一人で、松子の一人息子である佐清(すけきよ)がようやく復員してくる。しかし、その顔は白いマスクで覆われていた。元の顔が分らないほどの傷を戦地で負ったのだ。そして、一族は、佐清が本物かどうか疑いつつも、遺言の発表を迎えることになる。
 しかしその内容に一同は驚く。佐兵衛の遺言は、実の娘、松子・竹子・梅子とその孫たちをさしおいて、佐兵衛が面倒を見ていた、亡き野々宮氏の孫娘・珠世に全財産を譲るというものだったからだ。さらに、それには条件が付けられていた。珠世が、三人の孫のいずれか一人と結婚せよというのだ。娘たちは珠世ををなじりながらも、自分の息子を珠世と結婚させようと画策を始める。
 同じ頃、寂れた旅館・柏屋に、顔を隠した復員兵が宿泊する。ある夜、復員兵は、不審がる宿の主を尻目に外出。そして同じ夜、竹子の息子・佐武(すけたけ)が殺さる。首を切断され、菊人形の首とすげ替えられるという異様な犯行だった。その嫌疑は、別人と疑われていた佐清に向けられる。そして佐清本人であると証明するため、奉納手形との照合が行われることに。が、手形は合致し、佐清本人であることが証明される。一方、金田一は、最初の若林事件に解明の糸口があると悟り、調べはじめる ・・・。


[コメント]
 角川映画第一弾にして石坂金田一第一弾。映画の質以上に、日本映画復活ののろしを上げた作品として有名。当時低迷していた日本映画は角川文庫やテレビとのメディアミックス戦略により大胆な宣伝を敢行。一見相反するような戦略でしたが、当時の成熟した横溝正史ブームも手伝って大ヒットとなりました。その後様々な弊害や問題を日本映画にもたらした初期体制の角川映画ですが、日本映画史に大いに影響を与えたことは否定できません。
 物語は終戦直後、三国連太郎演じる犬神佐兵衛が病没するところから始まります。そして、佐兵衛が実の娘ではない珠世に全財産を遺す、ただし、三人の孫と誰か結婚すること、と異常な遺言したことから猟奇連続殺人事件の幕が切って落とされます。孫の一人、佐清は戦地から戻ってきたばかり。しかも顔一面がただれてしまって仮面をしなければならないほど。怪奇性を否が上にも高めていきます。物語は誰が犯人なのか、佐清は本物なのか。さらには、佐兵衛が女工に生ませたと青沼静馬なる人物。次々と謎が提示され、本格推理物らしい物語が展開されます。
 原作は横溝正史。日本本格推理小説の草分け。映画では内容以上におどろおどろしさを前面に打ち出し、中にはグロテクスなシーンも堂々と採用するなど、見る者の目をひくに十分なつくり。一方で、メロディアスな音楽を大野雄二が作曲。猟奇殺人に似合わない叙情的な音楽で、殺伐としがちな物語の雰囲気を見事にロマンチシズムあふれるものに変えています。そして文字をパズルのように組み合わせたオープニングタイトルも市川崑作品独特の仕様。見た目から内容まで斬新な作品づくりを試みたと言えます。
 主演は石坂浩二。それまでスーツ姿で描かれることの多かった名探偵金田一耕助ですが、ここからよれよれの和服姿の金田一像がスタートします。もっともこれは原作どおりの姿。石坂金田一は二枚目すぎるきらいはありますが、理知的な風貌ととぼけた演技というアンバランスさが絶妙の個性をかもし出したと言え、未だ絶大な支持を得ているようです。
 後半、金田一は犬神佐兵衛の生涯に着目しはじめます。そして、佐兵衛と恩師・神官夫婦との異常な関係にたどり着き、ついに珠世(島田陽子)が佐兵衛の孫であることを突き止めるのです。妙なところに目をつけ、それが周囲の嘲笑を買う金田一の姿はシリーズおなじみになりました。が、終盤、それが事件の核心を突いていたことを皆は思い知らされることになるのです。本作でも最後、事件を解決した金田一を皆が慕い、見送ろうとするところは爽快感すら覚えます。
 この映画のおどろおどろしさは独特のもの。ホラー的な雰囲気を強く感じるつくりと言えます。ただし、本格ミステリーの弊害もあります。複雑に過ぎる人間関係を通り一遍のせりふやメモの映像だけで観客に記憶させるのはさすがに至難の業。本ならページを戻して確認できますが、かといって無視して通り過ぎると後で分からなくなっておもしろさが半減してしまいます。しかし緻密なつくりは見事なもの。大雑把になりがちなハリウッド映画の比ではありません。世界に誇れる、とまで呼べるかどうかは別ですが、日本ミステリー映画の傑作と呼ぶにふさわしい作品ではないでしょうか。

[関連ページ]
「悪魔の手毬唄」 (シリーズ第2作(次作))


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