映画十撰 : 「サイレン」(2006年/日本/87分)

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「サイレン」(2006年/日本/87分)

[データ]
「サイレン」
“Forbidden Siren”
[監督] 堤幸彦
[脚本] 高山直也
[撮影] 唐沢悟
[音楽] 配島邦明
[出演] 市川由衣、田中直樹、阿部寛、西田尚美、松尾スズキ、高橋真唯、西山潤、嶋田久作、森本レオ
[評価] ★★★☆☆
 
[あらすじ]
 1976年、夜美島(やみじま)。嵐の夜、ただ一人を除いて島民が全員消失する事件が起きる。男が見付かった時は半狂乱状態で、サイレンが鳴ったら外へ出るな、とわめいていた。そしてその時、島中にけたたましいサイレンの音が鳴り響く。
 29年後。天本由貴は、病弱な弟・英夫の転地療養のために夜美島を訪れる。父・真一と飼い犬のオスメントもいっしょだ。島では診療所の医師・南田が出迎えるが、島民たちが一様に刺すような視線を自分たちに向けるのを由貴は感じていた。住居となる古びた一軒家に着くと、由貴は壁に血らしき跡を見つける。さらに隣の里美という女性が手伝いにやって来て、サイレンが鳴ったら外に出るな、という島の謎の迷信を由貴に伝える。
 ほどなく、英夫と共に診療所を訪れた由貴だったが、英夫がいなくなり、探しているうちに廃屋へと行き着く。そこには“DOG LIVE”と壁に殴り書きがあり、床には「1976年の取材メモ」と題された手帳が落ちていた。その中身を見て由貴は驚く。どのページにも「サイレン」という言葉が記され、最後のページには、「3度目のサイレンで島民に変化」、と書かれてあったのだ。
 その後英夫を丘の斜面で見つけるが、見知らぬ赤いマントの女を由貴は目撃する。さらに、途中に寄った集会所では、島民たちが放心状態で儀式のようなものをしている。由貴は島に不気味な何かを感じ始めていた。そして夜、突如として耳をつんざくサイレンの音がこだまする。サイレンが鳴ったら外に出てはいけない。その言葉を思い出した由貴は英夫の部屋に急ぐ。が、英夫の姿はすでになかった ・・・。


[コメント]
 堤幸彦監督はつくづく「孤島」好き、だと思います。本作もまた絶海の孤島が舞台。筆者はよく知りませんが、元は人気ゲームソフトだそうで、そのせいかいどうか、プロットの面白さはずば抜けています。ただし、これは堤作品の欠点なのですが、サスペンスのような緻密さはなく、ミステリーのようにフェアなつくりでもありません。とにかくその時々で見る者の興味をひいてしまえばよい、との方針のようで、面白さに対してさほど評価が上がらないことが通例となってしまいました。
 物語の舞台は、南海の孤島、夜美島(やみじま)。島ではかつて全島民消失事件が発生。ひとりだけ生き残った男(阿部寛)は「サイレンが鳴ったら外へ出るな」とわめく半狂乱状態。が、男はやがて自殺してしまい、事件の真相は迷宮入りとなってしまいます。そして29年後、由貴(市川由衣)が弟(西山潤)の転地療養のため父親(森本レオ)と移住。すると隣の島民(西田尚美)から、サイレンが鳴ったら決して外に出ないよう忠告されるのです。そしてその夜、由貴の耳に島中をつんざくサイレンの音が飛び込んできます。以来、由貴は戦慄の恐怖を体験することになるというわけです。
 冒頭、ロアノーク島全島民失そう事件(16世紀)、マリー・セレスト号全乗組員失そう事件(19世紀)が紹介されます。ロアノーク島では“Croatan”という謎の文字を残して失そう。いかにもいわくありげなのですが、これらに呼応するモチーフはその後まったくなく、つまりは単なる客引きのようです。できれば少しは展開に絡めて欲しかったところです。
 そしてもうひとつ、作中では人魚伝説がモチーフに使われています。人魚の肉を食べると不老不死になる、という有名な言い伝えです。その一方、しばしば現れる赤い衣の女性。一体彼女は何だったのか。果たして由貴の妄想だったのか、それとも本物の人魚だったのか?その役割すらも明確にしないまま物語は幕を閉じています。ところがラストでは、四度目のサイレンのくだりが登場します。由貴は四度目のサイレンの真実を知らないわけですから、誰かが由貴に四度目のサイレンを聞かせ、殺戮行為へと奔らせた、ということになります。それはあの、赤い衣の女性ではなかったのか。一人野原に佇む少女の姿が、それを暗示しているように見えます。いずれにしても、赤い衣の女性と人魚との関連、少女と由貴との関連について、もう一歩踏み込んで欲しかったところではあります。
 さらにこの設定には大きな矛盾があり、島民が全員失そうしたはずなのに、島民が昔から土着している設定となっているのです。島の外国的雰囲気、ハーフ風の島民の容貌、医師・南田(田中直樹)も「島民はよそ者を嫌う」と、島の歴史が絶え間なく続いていたことを思わせるモチーフが多く含まれます。
 また、由貴の幻影にしてもどこまでが事実でどこまでが幻影なのか一部しか(由貴の回想カット)明確にしてはいません。プロットの緻密さは希薄と言えそうです。伏線もさほど張られているとは言えず、見る者には推理不可能、という点でもフェアなつくりとは言えないような気がします。ただ、これらのすべてを描くことで、展開がスローになってしまうおそれはあるかもしれません。このあたりは見る側の性格に依存しそうです。
 しかし最後の種明かしはさすがに驚愕。ここではじめて、この映画がなぜ「サイコホラー」と呼ばれるのかを実感することになります。何より、息をつかせない展開の見事さは超一級ではないでしょうか。90分ほどにまとめ上げたこともあって、間延びしたシーンは皆無に等しいと言えます。冷静になれば先に述べた疑問がいくつも出てくるのですが、それを考えさせない勢いが本作にはあります。堤作品の面白さがとてもよく発揮された映画だろうと思います。

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